皆さんこんにちは。理学療法士のひろです!
今回は『骨粗鬆症』とはどんな病気なのかについて紹介していきます。
骨粗鬆症と聞くと
「骨がスカスカになる」
「骨がもろくなる」
「年を重ねるとなる可能性が高くなる」
など、さまざまな印象があると思います。
多くの方は「高齢になると必然的になっていくもの。」と捉えて若い時には意識から離れがちです。
しかし、骨粗鬆症は若い頃の生活習慣が骨粗鬆症に大きく左右します。
現代のダイエット文化や質的な栄養失調により、今後骨粗鬆症は増えていくと予想されています。
また、30代から好発してくる病気には、骨粗鬆症のリスクを高めるものが多く存在します。(関節リウマチ、副甲状腺機能亢進症などなど…)
自分や自分の家族を守るためにも、骨粗鬆症について知って欲しいと思いこの記事を書きました。
是非最後まで目を通していただければと思います。
骨粗鬆症とは
WHO(世界保健機関)では骨粗鬆症を
「骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の以上を特徴とし、骨の脆弱性が増大し骨折の危険性が増大する疾患」
と定義しています。
そもそも骨というものは『骨塩』と『骨基質』に分かれており、骨粗鬆症はその両方とも減少している状態を指します。
(骨はどうやって出来ているのかに関してはこちらの記事を参考にしてください。)
【記事】
骨の構造は『鉄筋コンクリート』で考えるとわかりやすいです。
骨塩はコンクリートで、骨基質は鉄骨に当てはまります。
鉄骨がボロボロでコンクリートがはがれている家は台風や地震が来ると大きく破損してしまいますよね?
骨粗鬆症も同じで、骨がもろい状態で強い衝撃(転倒など)加わると、骨折に繋がる危険性が高まります。
骨折に関しては特に大腿骨頚部、脊柱の2か所に生じやすく、骨粗鬆症もその2か所に生じやすいです。
つまり、骨がもろいために折れやすいということですね…。
4大転倒部位(図)
具体的な診断基準は
脆弱性骨折のある例では骨密度が若年成人平均値(young adult mean:YAM)の80%未満
骨折がいない例ではYAMの70%未満を骨粗鬆症
と言われています。
骨粗鬆症が生じやすい年齢は?
骨粗鬆症は、原因がさまざまあります。
その中でも加齢による骨粗鬆症は特に女性に多く、40代から発症率が高まります。
2021年の段階では骨粗鬆症の患者数は実に1280万人(男性300万人、女性980万人)いると言われており、今後も増え続けることが予想されています。
身体の部位別でみると一般住民(40代以上)の有病率を見てみると
腰椎(第2~4番):男性3.4%、女性:19.2%
大腿骨頚部:男性12.4%、女性26.5%
と言われています。
これを見てわかる通り骨粗鬆症は圧倒的に女性の方が発症しやすく
40代以上の4人に1人は骨粗鬆症と診断されているんです。
では、なぜ40代の女性に骨粗鬆症が多いのでしょうか?
骨粗鬆症の原因は?
骨粗鬆症の原因は大きく分けて2種類あります。
①原発性骨粗鬆症
簡単に言えば加齢によるものです。
年齢を重ねると、特に女性はカルシウムを吸収するための臓器の機能が低下します。
そして、カルシウムやミネラル等の栄養不足に伴い骨生成が不十分となって行きます。
ところでなぜ、女性に骨粗鬆症が多いのか。
それは、女性の閉経と関係しています。
閉経後は女性ホルモンであるエストロゲンが急激に減少します。
エストロゲンは
①破骨細胞と言われる骨吸収を進める細胞
②骨芽細胞と言われる骨の形成を促進する細胞
この2つの細胞の量を調節する働きがあると言われています。
しかし、エストロゲンが低下することによって破骨細胞の量が増えてしまいます。
結果として骨密度を下げ骨粗鬆症を引き起こすと言われています。
年齢を重ねて、運動習慣が減少するとますます骨粗鬆症が進んでいきますね…。
年齢を重ねる事で骨密度が下がるというのははっきり言って防ぐことができません。
しかし防ぐことが出来なくても、骨粗鬆症の進行を遅らせる生活習慣を取り入れる事で進行を遅らせることは出来ます。
破骨細胞、骨芽細胞などの詳しい説明はこちらをご覧ください!
【記事】
②続発性骨粗鬆症
他疾患や薬剤によって引き起こされる骨粗鬆症のことです。
原因は疾患や使っている薬剤によって様々ですが、特にステロイドを使用している方は骨粗鬆症のリスクが高くなると言われています。
骨粗鬆症になるとどんなリスクがあるの?
骨粗鬆症で起こりうるリスクの一番は骨折です。
転倒することで骨折するというのは誰でも容易に想像できると思いますが、実は転倒以外にも骨折を生じさせる要因はたくさんあります。
例えば骨粗鬆症が重度だと、くしゃみをしただけで骨折をするなんてこともあります。
また、自分の近くの高齢者で「あの人背中が曲がってきたな。」っていう方いませんか?
骨粗鬆症の方は不顕性骨折といって特に痛みが出ていないのにいつの間にか骨折しているということがあります。
腰椎が骨折している事でだんだん背骨が丸くなり、いつの間にか骨折してしまっているというわけですね。
そして骨粗鬆症の恐ろしいところは、自覚症状がないところです。
基本的には転倒し骨折をした際に調べてみると骨粗鬆症として認識されることが多いです。
なので、「予防しろ!」と言っても予防しにくいのが骨粗鬆症です。
しかし、自覚症状が無くてもある程度リスクを予測することは可能と言えます。
例えば、ガイドラン上での骨粗鬆症のリスクには、家族歴があります。
家族に骨折したことがある人や骨粗鬆症と診断されている場合は若い時からでも注意しておく必要があるでしょう。
また、骨密度は1~4歳、12~17歳の2つの時期に上昇すると言われており、20代でピークを迎えます。
その後は高い値を維持しつつ、閉経前から骨密度は低下していきます。
骨密度が上昇する思春期にスポーツをやっているかいないかで骨密度の違いがみられという研究もあります。
他にも、体重が骨密度に影響すると言われており、近年やせ型の方が増えていることから見ても栄養面の観点で骨粗鬆症になるリスクが高いと言われています。
なので
①家族に骨折歴・骨粗鬆症歴がある
②運動歴が少ない
③やせ型
の方は、今後骨粗鬆症について頭の片隅に入れておきましょう。
しかしあくまでも可能性なので、全て当てはまるからと言って必ずなるわけではありません。
過度に不安を抱く必要はありませんが、可能性があるというコトで予防の観点から知識を付けておくとよいです!
どうやって予防できるの?
予防方法は主に『運動』と『食事』です!
どんな運動や食事をとればいいかはこちらの記事を参考にしてみて下さい。
【 】
大事なのは若い時から運動や良い食事を継続して習慣化させることです。
現代人のダイエット文化が骨密度を下げることがわかっていますし
思春期に望ましい食生活を送ってきた女性の骨密度は、
そうでないものに比べて大人になってから高いことがわかっています。
骨密度の知識は貯金と一緒です。
若い時から知識を付けて習慣化させることで40年、50年後に効果を発揮します。
宝くじみたいに一気に骨を強くすることなんてできませんし、ましてや体には逆効果です。
自分に合った継続しやすい環境や日常生活に、運動や食生活を取り入れていきましょう。
僕は理学療法士として働いている中で多くの大腿骨の骨折や脊柱の椎体骨折をしている方を見てきました。
骨折を経験した方の多くは痩せている方、もしくは体重が合っても筋力が低い方が多い印象です。
まずは骨を強くする食事と運動を日ごろから心がけること。
そして転倒を予防するための筋力やバランス能力を付けておくことが骨粗鬆症、骨折の予防に繋がります。
若いうちから準備は怠らないようにしましょう!
高齢になってから予防しても遅い?
結論から先に言いますとそんなことは全くありません!
特に運動療法による効果は期待できます。
文献上では
身体的運動は骨密度を増加させ骨質を改善し骨強度を高めること、衝撃のある運動もない運動もともに運動は腰椎の骨密度を増加させる。
大腿骨頚部の骨密度に関しては衝撃のある運動に正の影響がみられる。
Resistance trainingは骨量を増加させ、骨密度の年齢に伴う減少を抑える。
運動、身体活動改善による骨折・骨粗鬆 症予防のエビデンス
と言われています。
どういうことかと言いますと
①歩行、足の体操、抵抗運動など様々な運動が腰椎の骨密度上昇につながる
②ジャンプやジョギングなどの衝撃運動で大腿骨の度骨密度を上昇させる
③スクワットや重りを用いた抵抗運動が年齢に伴う骨密度の減少を抑える
ということです。
正直高齢の方にジャンプやジョギングなどの運動は転倒のリスクになります。
なので、安全に行うことができる運動として片足立ち保持、スクワットが非常におススメです。
とはいえ高齢になると骨生成、骨破壊の骨リモデリングの機能が低下します。
そのため「骨粗鬆症を完全に治してやろう」
という考え方より
「これ以上骨密度の低下させない」
という考え方で運動をすると良いでしょう。
最後に
今回は骨粗鬆症について説明させて頂きました。
最後に今回の内容を振り返っていきます。
①骨粗鬆症骨の骨塩と骨基質が両方とも減少している状態であり、特に大腿骨頚部、脊柱に生じやすい。
②骨粗鬆症は特に閉経後の女性に多く発症しやすく、その原因はエストロゲンの減少が要因になる。
③骨粗鬆症は転倒後骨折するリスクが高まり、重度だと日常生活上での動作や知らないうちに骨折を生じていることもある。
④自分の生活や環境に合わせて若い頃から食事、運動の習慣をつけることで、骨密度の低下を遅らせ骨粗鬆症を予防することができる。
⑤高齢になっても骨粗鬆症を予防することは可能であり、スクワットや片足立ちなど骨に荷重が加わる運動など安全にできる運動をすることで骨密度低下を遅らせることも可能である。
いかがだったでしょうか?
特に女性であれば骨粗鬆症になる危険性が潜んでいますので、自分自身や家族のことを守るためにも20代、30代のうちから骨粗鬆症についての知識を深めて予防していきましょう。
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